2019年6月16日高山市民文化会館(学会長 野尻博文)

市民公開講座 『児童精神科の実際―当院での取り組みと連携に求めること―』

■講師:遠藤ゆうな氏(臨床心理士・飛騨市こどものこころクリニック)
 飛騨市こどものこころクリニックは、平成30年11月に開院された児童精神科クリニックである。平成31年1月末には、受診者・予約待機者を合わせて300名を超えている。来院される子どもが抱える課題として、不登校、いじめ、学業不振、被虐待、家庭内暴力などが挙げられる。その背景には、発達特性や疾患といった個人要因だけでなく、子どもを取り巻く家庭環境、学校環境、対人関係、地域など様々な要因が複雑に絡み合っている。そのため、診断名や心理検査結果から一義的に子どもを診るのではなく、多方面から情報を集約し、見立てや介入を行っていく必要がある。
 このような複雑に絡み合う要因を紐解くためには、養育者をはじめとする家庭、教育、地域の医療・療育・相談機関といった子どもを取り巻く環境との連携が欠かせない。飛騨圏域では、小児科、精神科、子ども相談センター、発達支援センター、療育、リハビリなど、様々な機関がそれぞれの役割を果たしている。特に、発達過程にある子どもの療育という観点から、作業療法をはじめとしたリハビリとの連携は重要である。例えば、「落ち着きがない」という主訴に対して、児童精神科医療では発達や状態の評価(心理検査)、環境調整、ソーシャルスキルトレーニング(SST)、薬物療法などの介入が考えられる。しかし、その発達の基盤として、バランスや姿勢保持、視知覚などの感覚統合がなされているかという視点が必要になる。子どもの発達は、それぞれの発達課題を達成することで次の発達課題へと段階的に進んでいくことから、身体の土台作りはその後の発達を促していくうえで欠かせないものである。そのため、発達の流れを加味し、途切れのない支援を行っていくために、各機関の連携が重要であると考える。
 このような視点から、飛騨地域の各機関がどのような役割を担っていくのかを検討していくために、当クリニックの現状や取り組みを紹介させていただく。さらに、子どもたちに対するつながりある支援を目指して、作業療法と児童精神科の連携についての私見を述べていく。

■略歴
・平成23年3月 立教大学大学院現代心理学研究科臨床心理学専攻前期課程修了
・平成23年4月 浜松医科大学付属病院精神神経医学教室 臨床心理研修生
・同年 浜松市教育委員会適応指導教室、児童相談所(心理判定員)、民間の精神科クリニックに勤務
・平成23年9月 浜松市子どものこころの診療所 非常勤心理士として勤務
・平成25年4月 独立行政法人国立病院機構天竜病院児童精神科 常勤心理士として勤務
・平成30年4月 飛騨市こどものこころクリニック 常勤心理士として勤務

■主な所属学会
 日本心理臨床学会
 日本臨床心理士会
 小児精神神経学会
 日本EMDR学会

■論文・口頭発表
・遠藤ゆうな、野村昂樹、秦 基子、渡邉 往、野村和代、杉山登志郎:自閉症スペクトラム障害の人々への誤解と偏見(第Ⅱ部)自閉症スぺクトラム障害の人々と社会 療育・教育・支援の現場 発達障害児への家族支援 ペアレントトレーニングを通して.精神療法39(3):p371-376.2013.
・遠藤ゆうな、伊東文子、砂子恵美、石坂晃子、渡邉夏穂、藤田隼人、吉田沙野佳、野村和代、藤井千穂子、杉山登志郎、山村淳一:自殺企図があり自傷を繰り返した女児の入院治療、第46回全国児童青年精神科医療施設協議会
・野村和代、遠藤ゆうな、野村昂樹、渡邊 往、山崎知克、山村淳一、杉山登志郎:クリニックベースでのペアレント・トレーニングの効果検討~浜松市子どものこころの診療所における半年間の実践報告~、第107回日本小児精神神経学会
・遠藤ゆうな、岡本 和子、岩瀬 恵、久野 綾香、渡邉 往、加藤 康彦、藤田 梓、山村 淳一:
児童精神科病棟に入院した自閉スペクトラム症児の自己効力感(GSESC-R)とトラウマ症状の関連について、小児の精神と神経58(3)209-215.2018.

教育講座「相澤病院が実践したリハビリテーションにおける困難への挑戦」

■講師:村山幸照氏(作業療法士・慈泉会相澤病院)

 われわれ作業療法士を取り巻く外部環境は大きく変化しています。少子高齢人口減少社会に伴い、国は医療と福祉の現場にさまざまな効率化や成果の最大化を期待しています。こうした国の期待は、われわれ作業療法士にも大きな影響を与えています。例えば、急性期のクライエントに対する介入期間の短縮化や回復期のクライエントに対するアウトカム評価の厳格化などはその典型と言えます。こうした外部環境からの要求に対し、われわれ作業療法士は迷いや困難を乗り越え、新たな創意・工夫を具現化するためのイノベーションを起こしていかなければなりません。そしてそこには、われわれ作業療法士が持つ知識や感性、技術が大いに役立つような気がしてなりません。
 そこで、今回は、私どもが理想とする作業療法やリハビリテーションを提供するために、どのようにさまざまな壁を皆で乗り越えてきたかを具体的に紹介します。中には多くの失敗もありましたが、その失敗から学ぶものも少なくありませんでした。岐阜県は、私がはじめて作業療法を学んだ地でもあります。私たちの経験を紹介することで、岐阜県の多くの作業療法士の挑戦にお役に立てたら幸いです。

■略歴
・1998年 平成医療専門学院門学院作業療法学科卒業、敬仁会老人保健施設まほろばの郷
・2000年 慈泉会相澤病院総合リハビリテーションセンター
・2004年 慈泉会訪問看護ステーションひまわり 主任
・2006年 慈泉会訪問看護ステーションひまわり 科長
・2007年 慈泉会相澤病院脳卒中作業療法部門 部門長
・2015年 同院リハセラピスト部門 部長代行
・2017年 全国病院経営管理学会リハビリテーション専門委員会 正幹事
・2018年 信州大学経営大学院 経済・社会政策科学研究科入学 在学中
■資格
・福祉住環境コーディネーター(2001年)、介護支援専門員(2008年)、病院経営管理士(2014年)
■論文
・地誌的概念の喪失を呈した左後頭葉皮質下出血の一例(相澤病院医学雑誌、2009)
・平成20年度診療報酬改定による急性期病院でのリハビリテーションへの影響と現状(作業療法、2011)
・メモリーノートの活用が可能な記憶障害患者の認知機能の検討
-当院の高次脳機能障害クリニカルパスの適用基準の検討から-(作業療法、2013)
・タイムスタディーのABC分析からみた効果的なリハ専門職の組織体制(相澤病院医学雑誌、2015)
・生活障害に着目した急性期脳卒中患者の予後予測を行うための決定木作成の試み(相澤病院医学雑誌、2016)
・目標指向的介入によるデイサービス利用者の変化:縦断的研究(作業療法ジャーナル、2019)、他
■寄稿
・脳血管疾患に対するリスク管理(作業療法ジャーナル、2014)
・相澤病院における卒後教育の仕組み(北海道作業療法、2017)
・患者が理想とするリハの在り方(看護のチカラ、2018)、他

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